前回、静電容量無接点キーボードについて書きましたが、年末に購入した東プレ REALFORCE R2TLA-JPV-IVのご紹介など。
自分が購入したのは、写真のようにアイボリー、日本語配列、TKL(テンキーレス)、APC付き変荷重モデルです。サイズは一般的なテンキーレスモデルと同じで、最近流行りのキー周辺部位を狭くしたコンパクトなものとは違ってメインキー部分とファンクションキー部分、十字キーなどの部分の間にある程度のスペースがあるタイプになっています。近頃はF%キーや十字キーなども省いた60キー程度のコンパクトなものが流行っているみたいですが、いろいろ作業をするには、F%キーや十字キーは独立していた方が作業が捗ると思います(独立していないと、特殊キーとの組み合わせとかで入力になるので、打鍵スピードと正確さが落ちる)。省スペースキーボードはおそらくゲームに使う層向けなのだと思いますが、個人的にはゲームにはそんなに高いキーボードはいらないと思いますが。
東プレのR2シリーズの特徴としては、APC機能とソフトウェアで機能の設定が可能になったという大きな特徴があります。APCはアクチュエーションポイントチェンジャーの略で、キーをしたときにどの位置でオンにするかを変える事ができる機能です。これは静電容量無接点キーボード特有の機能で(普通のメカニカルキーでも似たような事はできますが面倒)、今回購入するときにどうしても試してみたかったものです。後で述べますが、実際は使いこなすまで至っていないのですが。もう一つの特徴がソフトウェアで機能の設定が可能になったという点ですが、これまではDIPスイッチで設定していたものが、PCにインストールしたソフトウェアで設定可能になりました。よくあるキーボード設定ソフトだと、ソフトをインストールしたPCでだけ機能が発揮できましたが、このキーボードの場合、PC上の設定ソフトで設定を行うと、その設定がキーボードに保存されるので、別なPCなどに繋ぎ変えても同じく使えます。これは非常に重要な点です。
キーボード自体は一般的なテンキーレス形状で、配列は日本語です。好きモノには英語配列を選ぶ人が多いのですが、今回自分はあえて日本語配列を選びました。理由としては、日本語の文章を多めに書きそうなので、リターンキーが大きいのと、日本語入力のONOFFが独立キーで可能、という点が大きかったです。もちろんそれらの機能もPCにキーリマップ関係のソフトウェアをインストールすれば自由に設定可能ですが、自分が使うすべての計算機で同じことをするのが面倒という理由で、自分はキーリマップソフトの使用はやめてしまいました。さらに、実はリモートで計算機を使う時に、ローカルPCにインストールしたキーリマップソフトのおかげでえらい目にあう場合があると気が付いたからでもあります。そういう理由で、キー配列などの特殊な設定をした場合、ソフトウェア上ではなく、キーボードのファームウェアレベルで動作するキーボードがどうしても必要でした。
キーボードのキーキャップのプロファイルは、Cherryっぽい感じですが、完全に同じという訳でもないです。東プレのキーボードの特徴ですが、きーぼど基盤とキースイッチの構造から、ベース部分を薄く作れるので床面からキートップまでの高さが低いという点があると思います。一番下のキーで計ったらだいたい3cmでした。
プロファイルは軽く円孤を描くシリンドリカルなタイプで、筐体自体が上部にかけて傾斜がついています。キーボード裏にはさらに傾斜を付けられるように足がついていますが、自分は机上にぴったり這うような低めの方が手首など疲れにくいので足は立てずに使っています(個人ごとに好みは違うと思います)。
前に紹介したLenovo K500と並べると大きさがわかると思いますが、外周などを狭くしたK500に比べてもそれほど小型にはなっていません。自分とくにコンパクトさにはこだわらないのと、横にマウスなどのポインティングディバイスを置いても邪魔にならないので(テンキー付きだと、手の横移動が増える)特にサイズに関しては問題ないです。
付属品ですが、キーキャップ抜き、CtrlキーとCapsLockキー、それと2種類の厚さの異なる黒いキースペーサーが付属します。スペーサーを入れることによって、キーを打った時の底打ちまでの距離を変えることで、キー入力の物理的な深さを変えるアイテムです。キースイッチ自体はAPCで入力の深さを変化させられますが、さらに厚さの異なるスペーサーを取り付けることで、3種類(1.5mm、2.2mm、3mm)のスイッチのキー入力の深さに加えて、物理的なスイッチ入力の深さも3種類(スペーサーなし、2㎜、3㎜)を選べるので、9通りのキー入力の設定が可能になります。これだけあれば、かなりこだわりのある人でも満足できるポイントは見つかるのではないでしょうか?
さて、キーボードのカスタマイズ性ですが、PCにインストールしたソフトウェアから行います。
まずはAPCの設定です。これは各キーをどの程度押した時にスイッチがONになるかを全キーに関して設定できます。深さは1.5,2.2,3.0mmです。自分は一番浅い1.5mmで使っていますが、非常に快適な打鍵感です。キーを上から少し押さえただけでキー入力ができるので、キーを底打ちさせずに軽い感じでキー入力ができるので入力スピードが早い上、力が要らないので疲れにくいです。この設定はソフトウェアで簡単に可能なので、自分好みの設定を簡単に見つけられると思います。設定画面では全キーを1.5mmにしていますが、もちろん個別のキーごとにAPCの深さを設定することもできます。
上述したように、設定可能なのは基本的にAPCとCtrlキーのリマップ程度だと考えれば良いと思います。昨今のフルカスタマイズ可能なキーボードに比べると、かなり設定可能な範囲は少ないです。
さて、カスタマイズと言えばキーキャップですが、REALFORCEのカスタマイズの幅を大きく減らしているのが、独自なキーキャップだと思います。
REALFORCEのキーキャップを外すとわかりますが、最大の特徴の静電容量無接点スイッチのキーキャップコネクタは現在デファクトスタンダードなCherry互換とは違っています。
Cherry互換なキーキャップと比較してみると、構造の違いがはっきりわかります。
静電容量無接点スイッチは、土管型の差込口に縦方向に切り込みのあるキーキャップになっていますが、Cherryのものは、十字キーのオス端子にメスのキーキャップを差し込む形状になっています。写真のCherryタイプのキーキャップの十字キーのメス端子の円形の外周は東プレのキーのものとあまり変わらないのですが、縦方向にスリットが入っていないので、そのままでは差し込めないです。逆にCherry互換の十字部分の縦方向にスリットを形成すれば取り付けられる可能性もありますが、果たしてそれでちゃんとした打鍵感が得られるかは?です。一応色違いのキーキャップはオプションで発売されていますが、1万5千円ほどするので、よほどの理由が無ければ購入対象にはならないと思います(少なくとも自分は欲しくない)。こういう独自規格は特許の絡みがあるのかもしれませんが、世界で日本製品がイマイチ売れない原因の一つであるような気もしてちょっと残念であります。
ハードウェアとソフトウェアについて長々書きましたが、キーボード自体の品質、打鍵感は素晴らしいものがあります。実はこの文章は別メーカーの赤軸キーボードで書いているのですが、それとは全く異なる打鍵感です。赤軸と比較すると、かなり柔らかいキータッチで、赤軸がスイッチを入れる感じで入力するのに対して、REALFORCEの方は、キーボードの表面をなぞる感じの打鍵感です。これはかなり好みが分かれるかもしれませんが、大量の文章を入力するような用途に対しては非常に疲れにくくて良いです。半面、FPSなどのキーボード入力を使うPCゲームなどでは、入力感が乏しくてイマイチだと思います。PCゲームに使う場合は、シートを敷いて浅めの入力にした方がいいかもしれません。なかなか高価なのでちょっと試すというわけにもいかないかもしれませんが、お財布に余裕があり、かつゲーム用途ではなくて、文章をたくさん打つ目的ならお勧めできます。ただ予算が厳しく、一台選べと言われると、他のメカニカルな赤軸キーボードあたりをお勧めすると思います。
静電容量無接点キーは一度味わうとやめられませんが、こと東プレ製はカスタマイズの狭さと価格がネックだと思います。最近、中華製の静電容量無接点キーのキーボードを売っているのを発見しました。さらに東プレのスイッチ用のカスタマイズ部品も結構売っているようです。ただ、カスタマイズするには東プレのスイッチをバラす必要があるようで難易度は高めっぽいです。機会があれば、中華製の静電容量無接点キーのキーボードも入手してみようと思っています。